JEARNサポートチームでは,言語グリッドの持つ様々な言語資源,言語処理機能などの既存のツールを組み合わせることで,NPO JEARNの国際的なコミュニティ活動における多言語コミュニケーションの支援を行っています.

現在,国際的な活動を行っているコミュニティが多数存在します.これらの活動の成功の鍵は,世界中の国の人々が活発に議論や情報交換に参加できることです.しかし,現実にはコミュニティの公用語が参加者の第一言語でないために,コミュニケーションがスムーズに行わないといったケースがしばしば見受けられます.

ジェイアーン(JEARN)は世界最大の国際教育ネットワークであるアイアーン(iEARN)の日本センターです.「防災世界こども会議」(英語名: Natural Disaster Youth Summit)では,参加国の学校がインターネットテレビ会議や英語掲示板で意見交換をしながら,「グローバル災害安全マップを作ろう!」をテーマにオンライン協働学習に取り組みました.

しかし,日本や台湾,セネガルの子どもたちなど,英語が苦手な教員・生徒は,テレビ会議のチャット画面や掲示板にメッセージを書き込むのが難しいと言う現実がありました.

そこで,言語グリッドプロジェクトのLangrid Inputを使い,母国語でメッセージを書き英語に翻訳することで,コラボレーションを実現しています.

以下で,実際に支援を行っているツールLangrid Inputや,そのツールの利用方法など,詳しく説明していきたいと思います.

多言語翻訳を用いたテキスト入力ツール Langrid Input

Langrid Inputとは

Langrid Inputのスクリーンショット

言語グリッドツールとして提供されているLangridInputとは,多言語に翻訳を行ってテキスト入力の支援を行うことが出来るツールです.例えば,英語が苦手な人が英語でのメールを作成しなくてはならない場合には,このツールに母国語を入力するだけで,英語のメールを書くことが出来ます.さらに,正しく翻訳されているかの確認は折り返し翻訳を見ることで,確認できるため,ストレス無くメールを書くことが可能となります.また,コミュニティの辞書も登録できるので,専門用語も適切に翻訳することが可能となり,より精度のいい翻訳を行うことが出来ます.









簡単入力

翻訳文を手に入れた後,その翻訳文をワンクリックで簡単に入力したい場所に反映することができます.

Langrid Inputを使い,翻訳結果をワンクリックで書き込んでいる様子

JEARNにおける Langrid Inputの利用シーン

JEARNにおける Langrid Inputの利用シーン

海外のこども達とのコミュニケーション

JEARN主催の「防災世界こども会議」(英語名: Natural Disaster Youth Summit)では,参加国の学校がインターネットテレビ会議や英語掲示板で意見交換をします. しかし,日本や台湾,セネガルの子どもたちなど,英語が苦手な教員・生徒は,テレビ会議のチャット画面や掲示板にメッセージを書き込むのが難しいと言う現実がありました. そのような場合に,Langrid Inputを利用することで,母国語を入力するだけで英語の文章を作成することができ,ストレスなく意見交換を円滑に行うことができるようになります.

   

Langrid Inputを使用した情報発信の流れ

機械翻訳を利用した情報発信の流れ
生徒がコンピュータの前で作業している様子

Langrid Inputを使った情報発信の流れを示したものが上図です. まず,生徒にメッセージ文を考えさせ,そのメッセージをワープロあるいは機械翻訳の入力画面に直接入力します. 次に,機械翻訳を使って英文に翻訳します. この機械翻訳の部分をLangrid Inputで行います. 最後に,翻訳された文章をフォーラムに書き込んだりプレゼンテーション作成に使用したりして情報発信やコミュニケーションのためのメッセージとして使用するのです.

Langrid Inputを利用した国際交流によるこども達への影響

海外の相手校とプロジェクトを通した交流を通して,生徒の英語を使ったコミュニケーションに対する意識には変化が見られました. 事前事後のアンケート結果を下図に示します. 生徒の変化を見るためにコミュニケーションや外国の文化についての意識調査を授業開始前(2006年9月)と終了後(2007年2月)の2回行いました. アンケートは,5段階評価で「3」を中間層とし,「1」?「2」をその項目に対して,自信のない下位層,「4」?「5」を自信のある上位層とします. 結果,事前アンケートは,生徒の英語に対する自信のなさを裏付ける結果となりました. それに対し,授業後に再度行ったアンケート調査では,「人とのコミュニケーションに対する自信」では0.1ポイントしか変化がありませんが,「英語を使ってコミュニケーションするのは得意ですか.」という項目は,1.4から2.1ポイントに上昇し,0.7ポイントの差がでました.

以上のことから,Langrid Inputを活用したコミュニケーションを通して,英語を使ったコミュニケーションに対しての苦手意識に改善が見られたことがうかがわれる. しかし,同時に英語の4技能に対する意識の変化はあまりなかったことについては,注意する必要がある. 生徒の授業に対する自由記述によるアンケートにも,「もっと交流したいと思った」や,「英語がわからなくても簡単にできて楽しいと思った」など,海外との交流に対して肯定的な意見が多くあった. しかし,肯定的な意見がある反面,機械翻訳の設定の難しさや,日本語にちゃんと訳せないなど機械翻訳の性能に対する不満も見られた. これらのことは,今後解決していくべき技術的な課題である.

事前事後アンケート結果の比較

JEARNさんの声

JEARN 防災世界子ども会議プロジェクト実行委員会 副実行委員長:納谷 淑恵
納谷 淑恵さん(右)

「防災世界こども会議」では,現在日本の小学生と高校生が言語グリッドを使って世界と交流しています.生徒の感想は,「すご?い」「楽しい」「面白い」「簡単に英語にできて交流が楽しめる」など肯定的な意見が多いです.すべてを自分の力で英語にしていたのでは,時間がかかりなかなか交流が進まないのが現実ですが,言語グリッドを利用することで,より深い内容の交流ができるようになっています.高校生の場合,自分で表現できるところは自分で英文を作成し,できない部分のみに言語グリッドを使用するなど,使い方も自分なりにアレンジしています.将来は英語学習ツールとしても利用できるのではと期待しています.

JEARNホームページ

資料

2006研修所研究発表資料(PDF)
ICTを活用した実践的コミュニケーション能力の育成
?防災をテーマとした英語での情報発信を通して?(納谷 淑恵)

ICT を活用した実践的コミュニケーション能力の育成
?防災をテーマとした英語での情報発信を通して?(納谷 淑恵)

How Intercultural Disaster Reduction Education Change Students: A Case Study of an Evening Course Senior High School in Hyogo, Japan(Yoshie Naya)

JEARNサポートのリーフレット (pdf:427KB)

SIG (Special Interest Group)

第3種SIG

メンバ

リーダー 北村 泰彦
 (関西学院大学理工学部情報科学科 北村研究室)
会員 酒井雅志
 (関西学院大学理工学部情報科学科 北村研究室)
村上 陽平
 ((独)情報通信研究機構)
納谷 淑恵
 (NDYS(防災世界子ども会議)プロジェクト実行委員会)